原子力用語集
圧力容器
原子力発電所の炉心部、核燃料、減速材及び1次冷却材など原子炉の主要構成材料を収納し、その中で核分裂のエネルギーを発生させる容器。原子炉運転時の高温・高圧耐えるよう設計されている。五重の防壁のひとつ。
イオン交換樹脂
合成樹脂の一種で水には不溶性であるが、粒状の樹脂が入った管に水を通すと、その水が含むイオンと樹脂のもっているイオン源とを交換する働きがある。原子炉内を循環する水をイオン交換樹脂に通すことによって純度の高い水(純水)に保つことができる。
一次冷却材
冷却材には軽水、ナトリウム、炭酸ガス、ヘリウムガスなどが用いられる。原子炉の炉心から熱を取り出し、外部に移動させる働きをしている。日本の原子力発電所では中性子の減速材もかねる軽水を使っている。
インターロック・システム(interlock-system)
例えば、運転員が誤って制御棒を引き抜こうとしても、制御棒の引き抜きができないようになっているなど、誤った操作によるトラブルを防止するシステム。
ウラン
人工元素を除き、自然界に存在する元素のなかで最も重い。元素記号はUで、原子番号は92である。天然ウランには主に三種類の同位体が存在し、それらは質量数234、235及び238である。このうち核分裂を起こしやすいのはウラン235であるが、天然ウランはウラン238が約99.3%であり、ウラン235は約0.7%しか含まれない。軽水炉で用いる核燃料とするには、ウラン濃縮を行い、ウラン235の割合を上げなければならない。
ウラン濃縮
濃縮とは2種以上の同位体で構成されている物質から、一方の同位体の存在比を高めることをいう。自然界にあるウラン鉱石から分離したウラン元素には、中性 子を吸収して核分裂をするウラン235が0.7%程度しか含まれていない。したがって、天然ウランでは核分裂の連鎖反応を起こしにくいので、軽水炉用の燃 料としては、効率よく核分裂を起こさせるために、ウラン235の割合を3~5%までウラン濃縮により高めることが必要になる。
遠心分離法
ウラン濃縮に用いられる方法の一種で、分子量の異なったものに回転により遠心力を与えると、分子量の多いものほど外側に分布する性質を利用し、ウラン235とウラン238を分離させる。ガス拡散法よりも濃縮効率が優れている。
応力
物体が外力の作用を受けるとき、物体内部の任意の断面に、その外力とつりあいを保つように内力が発生する。その単位面積たりの内力を応力という。物体内部に生じる力の大きさや作用方向を表現する物理量である。
温室効果
惑星の表面から発する放射エネルギーが、大気圏外まで届く前に惑星の大気に吸収され、その大気温度が上昇する現象。この現象を起こす気体を温室効果ガスという。気温が上昇する構造が、ビニールなどで覆われた温室内の温度上昇に類似しているため、この名前がつけられた。
温室効果ガス
大気圏内にあり、地表から放射されたエネルギーの一部を吸収することにより温室効果をもたらす気体の総称。そのガスとしては、二酸化炭素、メタンガス、水蒸気などが考えられている。特に近年、世界的に工業の発展、火力発電所の増加など化石燃料使用が増え、それらから排出される二酸化炭素の増加が懸念されている。
温排水
原子力発電所では、タービンを回した蒸気を復水器で冷却し、再び水に戻し原子炉や蒸気発生器に送っている。復水器の冷却に海水を用いている。海水は利用後再び海に排出されるが、環境への影響を考慮し、排水温度は取水したときに比べて温度上昇を約7℃以下になるよう調節されている。
加圧水型原子炉(PWR)
軽水炉のうち、炉内で圧力を高くし冷却水を直接沸騰させない形式をいう。この形式では、タービンに供給する蒸気を発生させるために蒸気発生器を必要とする。原子力船の原子炉はこの形式である。
改良型沸騰水型原子炉(ABWR:Advanced Boiling Water Reactor)
従来の沸騰水型原子炉(BWR)に比べて、信頼性、安全性の向上、稼働率・設備利用率の向上、廃棄物量の低減、運転性・保守性や経済性の向上を目指した炉のこと。
確認可採埋蔵量
現在の技術・経済条件の下で取り出すことができると確認できる資源の量。確認可採埋蔵量をその年の資源の年間生産量で割ると可採年数になる。(ウランにつ いては、年間需要量で割っている)一般的に「埋蔵量」、「確認埋蔵量」として示されているものは、確認可採埋蔵量のことである。
核燃料サイクル
原子炉の燃料となるウランは、鉱山で採掘された後、原子炉で使用されるまでに、様々な化学的、機械的加工が行われる。また、原子炉で使用された後も再処理 することにより、核分裂性物質を抽出し、これを再び核燃料として利用する。このような一連の循環過程を核燃料サイクルという。
核分裂性物質
ウラン235、プルトニウム239などのように、その原子核に中性子がぶつかると核分裂する性質の物質をいう。低速中性子で効率よく核分裂し天然に存在する元素はウラン235のみで、人工のものとしてはウラン233、プルトニウム239などがある。
核融合
原子核反応の一種で水素、重水素、トリチウムなどの軽い原子核が核反応の結果、より重い原子核になる現象。反応前と後では質量和は反応前の方が大きく、その差がエネルギーとして放出される。この反応を利用して、エネルギーを取り出そうとするのが、核融合炉の考え方である。
ガス冷却炉(GCR)
炭酸ガス、ヘリウムなどの気体を冷却材に用いる原子炉の総称。天然ウランを燃料とし、黒鉛を減速材、炭酸ガスを冷却材として使用する、イギリスで開発されたコールダーホール型原子炉は代表的なものである。
活性炭式希ガスホールドアップ装置(活性炭吸着装置)
原子力発電所の排気中の放射性物質の濃度を減らすための装置。活性炭が詰められたタンクの中に排気を通すと、活性炭は物質を吸着する性質が高いので、放射性のキセノンやクリプトン等が吸着により長時間滞留し、時間とともに、放射性物質の濃度が低下する。
ガラス固化
核分裂生成物などをガラスの中に溶かし込んで固めること(色ガラスが色素を溶かし込んでいるのと同じこと)で、固化したものは非常に安定した物質となる。使用済燃料の再処理の過程で発生する高レベル放射性廃棄物はこの方法で固化される。
ガラス固化体
放射性廃棄物をガラスに溶け込ませたもの。廃棄する過程において、ガラスが半永久的に安定していることを利用し、高レベル放射性廃液とガラス原料とを高温で混合、溶融し、キャニスタと呼ばれるステンレス鋼製容器に流し込んで固化させる。
ガンマ(γ)線
原子核から出る電磁波。ガンマ(γ)線は物質を透過する力がアルファ(α)線やベータ(β)線に比べて強い。原子力発電所では、2~4メートルの厚さのコンクリートで原子炉を囲い、ガンマ(γ)線を遮へいしている。
管理区域(放射線管理区域)
原子炉格納容器内、使用済燃料の貯蔵施設、放射性廃棄物の廃棄施設などの場所で、外部放射線、空気中、水中の放射性物質濃度や放射性物質によって汚染され た物の表面の放射性物質の密度が主務大臣の定める値を超えるおそれのある区域をいう。この区域内は、特に放射線の管理が厳重に行われる。
希ガス
周期律0族のヘリウム(He)、ネオン(Ne)、アルゴン(Ar)、クリプトン(Kr)、キセノン(Xe)、ラドン(Rn)の6元素を総称する。この6元 素は大気中の存在量が非常に少ないので希ガスと呼ばれる。この元素は非常に安定しており、他の元素と容易に化合しない性質がある。原子炉内では核分裂生成物として放射性のクリプトン、キセノン、アルゴンなどが生まれる。
気候変動枠組条約
地球温暖化問題に対する国際的な枠組みを設定した条約。大気中の温室効果ガスの増加が、地球温暖化や地球環境に悪影響をおよぼしていることを認識し、温室効果ガスの濃度安定化に向けての取り組み、措置などを定めている。
キセノン
原子番号54 の元素。元素記号は Xe。原子量は131.30の希ガス元素。原子炉の中では放射能があるキセノン135が生成される。キセノン135は中性子をよく吸収するため、これが炉心に蓄積すると核分裂の進行が抑えられ、原子炉の熱出力が低下する。
京都議定書(COP3)
気候変動枠組条約に 基づき、1997年12月11日に京都市の国立京都国際会館で開かれた第3回気候変動枠組条約締約国会議(地球温暖化防止京都会議、COP3)で議決した 議定書のこと。地球温暖化の原因となる温室効果ガスのうち、発電や工業など人間活動が排出原因とされる二酸化炭素などについて、1990年を基準として先 進国の削減目標を各国別に定め、約束期間内に目標値を達成することが定められた。
軽水
普通の水のこと。水素の同位体である重水素と酸素が結合した重水と区別して、水素と酸素が結合した水を軽水という。軽水は中性子を吸収しやすいが、重水は吸収しにくい、また軽水の方が中性子を減速しやすいなど性質が異なるため、原子力の分野では区別されて扱われる。
軽水炉
減速材及び冷却材に普通の水(軽水)を使っている原子炉をいう。これには沸騰水型(BWR)と加圧水型(PWR)がある。発電用原子炉としてアメリカ、フランスを始め世界で最も多く使われている原子炉である。
原子力委員会
原子力委員会は、1956年に総理府に設置され、原子力開発・利用について、企画、審議、決定する権限を有している。 内閣総理大臣が、原子力委員会の決定 した事項について報告を受けたときは、これを十分尊重しなければならず、また、必要であれば、内閣総理大臣を通じて、関係行政機関の長に勧告することがで きる。2001年、内閣府に移設。
原子力安全委員会
原子力安全委員会は、1978年に原子力基本法等の一部改正が施行され、原子力委員会が 有していた機能のうち、安全確保及び安全規制に関する事項につい て、企画、審議及び決定する機関として設置された。内閣総理大臣が、原子力安全委員会の決定した事項について報告を受けたときは、これを十分尊重しなけれ ばならず、また、必要であれば、内閣総理大臣を通じて、関係行政機関の長に勧告することができる。2001年、内閣府に移設。
原子力三原則
原子力基本法第2条に日本の原子力研究、開発及び利用は、「民主的な運営の下に自主的にこれを行うものとし、その成果を公開し……」と規定されている。この民主・自主・公開の三つの原則を原子力三原則という。
原子力の日
10月26日。1956年の10月26日に、日本は国際原子力機関の憲章に署名。また、1963年の同日に、日本原子力研究所・動力試験炉(JPDR)が日本最初の原子力発電に成功。これにちなんで1964年に設けられた記念日。
原子核
単に核ともいい、原子の中心にあり、正電荷を帯び、原子を電子と共に構成している。通常の水素原子の原子核は陽子1個のみであるが、その他の原子では複数個の陽子と中性子から成る。原子と比べて原子核は非常に小さく、1万分の1以下である。
原子炉の自己制御性
原子炉の出力が増すと反応度が減少し、それに伴って原子炉の出力が減少する性質。燃料要素や減速材、冷却材が負の温度係数を持っている原子炉では、出力増加に伴う温度上昇があると、自ら出力を抑えようとする性質を持っている。
原子炉建屋
原子炉及びその関連施設を収容する建屋。厚いコンクリートで作られ、放射性物質が外に出ることを防ぐ。五重の防壁のひとつ。 原子炉建屋は高い耐震性を確保するため、一般に半地下式でかつ非常に頑丈な構造になっている。
元素
化学物質を構成する基礎的な要素。古代より概念としてはあったが、ボイル、ラヴォアジエにより実験的に検証され始めた。自然界で一番軽い元素は水素で、一番重い元素はウランである。ウラン以上に重い元素は人工的に作られ、それらを超ウラン元素という。現在、原子番号1番の水素から始まり、人工元素の113番目までが確認されている。
高温ガス炉(HTGR)
ガス冷却炉のうち、特にヘリウムを冷却材として用い、原子炉出口ガス温度を750℃以上の高温にして、熱効率の向上を図った原子炉。化学工業など多目的利用の可能性がある。
高経年化
原子力発電所の運転開始後の経過年数が長くなること。
高速増殖炉(FBR)
高速中性子により核分裂連鎖反応を起こさせる原子炉を高速炉と呼ぶが、高速増殖炉とは高速炉において炉心で消費した燃料以上の新しい燃料を作り出す仕組み の原子炉である。炉心は、通常プルトニウム239とウラン238で構成される。プルトニウム239の核分裂によって発生した中性子の一部はウラン238に 吸収され、新しい燃料であるプルトニウム239が発生する。
高レベル放射性廃棄物
ガラス固化体にされる廃棄物のこと。再処理施設でウラン、プルトニウムを回収した後に残る核分裂生成物質を主成分とする。半減期の長い元素が多く含まれるので、長期間にわたり人間環境から隔離する必要がある。
黒鉛
炭素から成る物質。身近なものでは鉛筆やシャープペンシルの芯として使われている。中性子を減速する性質があり、また中性子の吸収も少ないので、世界最初の原子炉「シカゴ・パイル1号」で減速材として使用された。現在でも黒鉛炉の減速材として使用されている。
国際原子力機関(IAEA)
国際連合の専門機関の1つで、1957年7月29日設立。その目的は原子力を世界の平和・保健・繁栄のため貢献させること。核分裂性物質の監視と原子力の平和利用に関する開発の推進を行う。
国際放射線防護委員会(ICRP)
放射線防護の国際的基準を勧告することを目的とする国際委員会で、世界の医学・保健・衛生等の権威者を集めて構成されている。我が国の法律もこの委員会の勧告に沿って線量限度等を定めている。
コンクリートの劣化
コンクリートに、空気中の二酸化炭素が浸透してしだいにアルカリ性を失ったり、塩分が浸透してしだいに鉄筋が腐食したり、コンクリートが熱や放射線を吸収することにより、しだいに水分を失ったりする現象。
再処理(燃料の再処理)
原子炉で使用した燃料の中には、燃え残りのウランや新しくできたプルトニウムなどの燃料として再び使用できるものと、放射能をもった核分裂生成物などが含 まれている。これを使用できるものとできないものに分ける作業を再処理という。これは、再処理工場で行われ、硝酸に燃料を溶かし有機溶媒を利用する、 ピューレックス法(溶媒抽出法)が主に採用されている。
再生可能エネルギー
太陽光や風力、水力、地熱、潮汐力、バイオマスなど自然界に存在するエネルギー源を指す。自然エネルギーと呼ばれるこ ともある。 いくら使用しても尽きないことから再生可能と呼ばれている。石油や石炭など、温室効果ガスの排出や、将来に枯渇が心配されるエネルギーに比べて、地球温暖 化への対策、また新たな利点を有するエネルギー源として、近年有効性と必要性が認識されてきている。
最大需要電力
電気の使われ方には、多い時と少ない時があるが、ある期間(例えば1日、1か月、1年)の中で最も需要が多くあった電力が最大需要電力と呼ばれている。全国的には1年のうち夏に記録される。
サーベイメータ
携帯用の放射線検出測定装置で、アルファ(α)線、ベータ(β)線、ガンマ(γ)線及び中性子線用のサーベイメータがある。方式としては電離箱式、GM管式、比例計数管式、シンチレーション式、半導体式などがある。
酸性雨
環境問題の一つとして問題視される現象で、大気汚染により降る酸性の雨のこと。厳密にはpH5.5以下の雨のことをさ す。酸性雨の原因は化石燃料の燃焼や火山活動などにより発生する硫黄酸化物や窒素酸化物、塩化水素などである。これらが大気中の水や酸素と反応することに よって硫酸などの強酸が生じ、雨を強い酸性にする。酸性雨は産業革命以後、急速に進行したことから、人間の活動による大気汚染との因果関係が強いと考えら れている。
自然放射線(バックグラウンド)
宇宙線及びウラン、ラジウム、トリチウム、カリウムのような自然界にある放射性元素から出る放射線をいう。その量は地質により放射性元素の量や種類が異な るため、地域によっても差がある。例えば関西の花崗岩の多い地域と、自然界にある放射性元素の含有量の少ない関東ローム層の地域とでは、自然放射線の強さ が異なる。また、宇宙線の強さも緯度によって変わり、上空に上がるほど強くなる。
実効線量
人体の一部に受けた放射線をすべて足し合わせて、全身で受けたらどのくらいになるか換算した値。例えば、肺だけ10ミリシーベルト受ければ、全身が均等に1.2ミリシーベルト受けたのに等しく、この値が実効線量となる。
使用済燃料
原子炉を運転すると、核分裂するウラン235が減少するので、一定期間(1年前後)ごとに原子炉を停止して新しい燃料に取り替えなければならない。通常、 原子炉内の燃料は1回に3分の1~4分の1くらい取り替えるが、このようにして取り出された燃料を使用済燃料という。この使用済燃料は、発電所内の専用 プールに貯蔵冷却して放射能を弱めたのち、専用の輸送容器(キャスク)に入れて再処理工場へ送られる。
人工元素(人工放射性核種)
人工的に合成された元素(同位体)の総称。 自然界にほとんど存在せず、加速器や原子炉の中で合成される。プルトニウムなどの超ウラン元素はすべて人工元素である。
人工バリア
地層処分された廃棄物から生活環境への放射性物質の漏出の防止及び低減を目的とする人工構築物。地層処分の場合、ガラス固化体、オーバーパック及び緩衝材からなる。多重バリアシステムの構成要素のひとつ。
制御棒
原子炉の出力(核分裂の割合)を調節する役目をもつもので、中性子をよく吸収する物質(ホウ素、カドミウム等)で作られている。核分裂は中性子がウランにぶつかって起こるので、制御棒の出し入れによって炉内の中性子の数を変え核分裂の割合を調節する。
セイフティーカルチャー
チェルノブイル原子力発電所の事故後に、IAEAの国際原子力安全諮問委員会(INSAG)が提唱したもので、原子力開発に携わるすべての個人、組織が常に安全に関する意識を最優先にもって行動することを求めた思想。
石油危機(オイルショック)
第1次石油危機(1973年)は、第4次中東戦争を機に起こった石油価格の高騰に伴う物価上昇を指す。また第2次石油危機は、イラン革命による原油の高騰で1979年に起こっている。
設備利用率
発電所が、ある期間において実際に作り出した電力量と、その期間休まずフルパワーで運転したと仮定したときに得られる 電力量(定格電気出力とその期間の時 間との掛け算)との百分率比。年間の設備利用率(%)=〔実際の年間の発電電力量(kWh)÷(定格出力(W)×365日×24時間)〕×100
多重性・独立性
1つの機能を果たすために、数多くの設備がお互いに分離独立して設けられ、1つの設備の故障などがあっても他の設備が作動することによって、その機能を果たし得るような方法をいう。
タービン
気体や液体の圧力や運動エネルギーを、回転運動の機械的エネルギーへ変換を行う機械要素。大型のものとして発電用の蒸気タービン、水力タービンなどがある。そのほか風車や水車も含まれる。
地層処分
原子力発電などにより生じる高レベル放射性廃棄物の最終処分方法の一つ。放射能レベルが高く、半減期の長い放射性廃棄物を安全に処分するため、地質環境が長期にわたり安定し、放射性物質を閉じ込めることができる深度に埋設することを目的とする。地層処分の安全性を確保するため、人工バリアと天然バリアと呼ばれる多重バリアの概念が用いられている。
中性子
原子核の構成要素のひとつ。電荷はなく、陽子とほぼ同じ質量を持つ。核反応で放出される中性子は高い運動エネルギーを持ち、ウランやプルトニウムに吸収されることで、核分裂反応や核変換を起こす。非常に高い透過性を持ち鉄板でも遮蔽が難しいが、水やコンクリートには吸収される性質がある。
中性子源
中性子を発生する線源をいう。例えばラジウム226のようなα線を出すものとベリリウムを適当に混ぜた、ラジウム―ベリリウム中性子源、カリフォルニウム中性子源等が知られている。原子炉では、核分裂連鎖反応を最初に開始させるための中性子を出す線源として、原子炉の中にあらかじめ入れておく。
低レベル放射性廃棄物
放射能レベルの低い廃棄物のこと。原子炉内で中性子により放射化した燃料棒の部品や、原子炉を循環する水の浄化用フィルター、また原子力発電所内での作業時に放射性物質が付着した衣服や作業用資機材など、原子炉運転に伴い排出される廃棄物。低レベル廃棄物はドラム缶に詰められて地中に埋設処理される。
TRU廃棄物
超ウラン元素が含まれる放射性廃棄物のこと。長半減期低発熱放射性廃棄物と呼ばれる。再処理施設、ウラン・プルトニウム混合酸化物加工施設の操業によって発生する廃棄物である。TRU廃棄物は放射能レベルに応じて浅地中処分、余裕深度処分、地層処分に分けて処理される。
天然バリア
処分された廃棄物と人間の生活環境との間にある地層などを指し、天然のものではあるが、廃棄物が人間の生活環境に影響を及ぼさないようにする障壁としての役割も期待される。多重バリア構成要素のひとつ。
ドップラー効果
原子炉において、燃料の温度上昇に伴い共鳴吸収量が多くなることをいう。このため燃料温度が上昇すると、原子炉の反応度は低下する。共鳴吸収とは。原子核 があるエネルギーの中性子を異常に吸収する現象をいう。軽水炉では、ウラン238の共鳴吸収に由来するドップラー効果が、原子炉の自己制御性に大きく寄与 している。
内部被ばく
放射性物質を含む気体や固体を体内に取り入れたときに、身体の内部から放射線を受けることをいう。人は普通飲食物(カリウム40などの自然の放射性物質を含む)から、年間約0.29ミリシーベルトの内部被ばくを受けている。
ナトリウム
ナトリウムは、工業製品などの原料として使われている。水銀のように銀白色に輝く金属で、97.8℃で液体となる(沸点は882.9℃)。酸素や水と反応 しやすいという欠点もあるが、よく熱を伝える、比熱が水の3分の1であるなどの優れた性質をもつ。また、中性子をあまり吸収せず、スピードを落とさせない ことから、高速増殖炉の冷却材に採用されている。
二酸化ウラン(UO2)
酸化ウランの一種。原子炉の燃料として用いられる。
燃料集合体
核燃料の取扱いが容易になるように、また冷却材の流れを考慮した形状に燃料棒を束ねたもの。BWRの燃料集合体は60本程度、PWRの燃料集合体は200本前後の燃料棒を束ねており、長さはともに約4mである。
燃料棒
核燃料のペレットを積み重ねて被覆管に挿入し、両端に端栓を溶接して、ペレットを密封したもの。ペレットと被覆管の間には、適切な隙間を設けるとともに、核分裂生成ガスによる圧力増加を緩和するための空間が設けられている。
熱蛍光(ルミネッセンス)線量計(TLD)
放射線を受けた物質が加熱したときに発光する(熱ルミネッセンス)ことを利用した放射線測定器。受けた放射線の量に比例して光を出し、何度でも利用できるため、原子力発電所などの放射線管理に広く利用されている。
濃縮ウラン
核燃料にはウラン235が必要であるが、天然ウラン中にはほとんどがウラン238で、ウラン235は0.7%程度しか含まれない。核燃料とするため、ウラン235の濃縮をより高くしたものを濃縮ウランという。発電用軽水炉の場合、ウラン235の割合を約3~5%にした濃縮ウランを用いている。
発電所の設備容量
発電設備の能力。発電所がどのくらいの量の電気を作ることができるかを示す。W(ワット)、kW(キロワット)などで表す。
反射材
中性子を吸収することが少なく、よく反射する物質を原子炉の炉心の外側に置き、炉心から漏れ出てくる中性子を炉心に反射して送り返す物質をいう。これにより炉心を小さく設計することができる。水、ベリリウムなど中性子を効率よく利用できることから使われる。
被覆管(燃料被覆管)
核燃料の酸化や腐蝕を保護し、また核分裂生成物などが外部に漏れることを防ぐため、燃料を覆うもの。被覆材としてはジルコニウム合金であるジルカロイなどが使用される。
非常用炉心冷却装置(ECCS)
原子炉内の水が減少したり、太いパイプが破れて急速に水がなくなった時などに、緊急に炉心を冷却するために設けられている装置。原子炉の中へ水を送り込んだり、燃料棒に直接水をかけて冷やしたりして、熱くなる燃料棒の破損を防止する。
疲労
材料に力が繰り返し加わって劣化する現象。
フェイル・セーフ・システム(fail-safe-system)
システムの一部に故障があった場合でも、常に安全状態に向うという考え方に基づき設計されたシステムのこと。例えば、加圧水型炉では制御棒駆動装置用の電 源がなんらかの理由で失われた場合でも、制御棒そのものの重さにより制御棒が炉内に落下し、安全に停止できるようになっている。
腐食
化学反応や水の流れにより材料の厚さが減る現象。
沸騰水型原子炉(BWR)
炉内で冷却水を沸騰させる炉型式で、発生した蒸気をそのままタービンに送る直接サイクル型となっている。
プルサーマル(プルトニウムの軽水炉利用)
ウランとプルトニウムの混合酸化物(MOX)を燃料として、従来のウラン燃料と同様に軽水炉で利用すること。プルトニウムの現在最も確実な利用方法。
プルトニウム(Pu)
天然には存在しない人工の放射性元素。ウラン238が中性子を吸収してウラン239になり、それがβ線を放出してネプツニウム239に、再びβ線を放出し てプルトニウム239になる。このプルトニウム239は、核分裂をする性質をもっているので高速増殖炉などの燃料に用いられる。
分子量
重さ、質量を表す物理量。分子の相対質量を表している。
ペレット
ウラン235を数%程度含むウランを酸化物にして焼き固めたセラミックス。直径、高さともに1センチメートルほどの小さな円柱形である。
放射線業務従事者の線量限度
2001年4月にICRP Pub.60を取り入れる形で線量限度が改定された。以前は年間50ミリシーベルトであったが、改定により5年間に100ミリシーベルトかつ1年間で50 ミリシーベルトとなった。また、女性に対しては、腹部で3ヶ月13ミリシーベルトが3ヶ月5ミリシーベルトとなった。このほか 皮膚においては1年間で500ミリシーベルト、水晶体では1年間で150ミリシーベルトといった線量限度が定められている。
放射性同位体(放射性同位元素)
同位体のうち放射線を出す性質をもつもの。ラジウムのように天然に存在するものと、人工的に作り出されるものがある。一般にラジオアイソトープ(RI)と呼ばれている。
放射性廃棄物
原子力発電所や再処理施設、放射化学実験室などから出る放射性物質を含んだ気体、液体、固体の廃棄物の総称。使用済燃料の再処理工程において排出される放射性物質を高レベル放射性廃棄物、それ以外の放射性廃棄物を低レベル放射性廃棄物という。
ポケット線量計
ポケットに入る程度に小さくした小型積算型の線量計。中心電極をあらかじめ充電しておき、放射線を受けることにより電極より放電が起きる。このことによる電位の減少の度合いを読み取って、受けた放射線の量を知ることができる。
MOX燃料(MixedOxideFuelの略)
ウラン燃料に含まれるウラン235に代わり、プルトニウムを混合させて用いたもの。
モニタリング
放射線を定期的に又は連続的に測定監視することをモニタリングという。原子力施設の周辺において野外の放射線監視を行うための施設としては、モニタリングステーション及びモニタリングポストがある。
モニタリングステーション
原子力発電所や再処理工場などの敷地周辺に設置される放射線監視場所。ここでは空気中の放射性物質濃度、放射線量率、積算線量などが測定される。
レーザー濃縮法
特定の波長(エネルギー)のレーザーを、金属ウランや粉末ウランに当てると、プラス電荷をもつウランとなる。ウラン235とウラン238では、わずかでは あるがこの波長に違いがある。この差を利用してウラン235とウラン238を分離し、ウラン235の濃度を上げる方法をレーザー濃縮法という。
劣化ウラン(減損ウラン)
ウラン235が含まれている割合が、天然ウランよりも小さいウランのこと。核分裂に使えるウラン235が天然ウランより少ないという意味で劣化ウランという。天然ウランには、核分裂を起こしやすいウラン235と核分裂を起こしにくいウラン238が含まれ、このうちウラン235の含有率は0.7%程度である。この天然ウランをウラン濃縮し、濃縮ウランを得た後の残された部分はほとんどウラン238となり、ウラン235の割合は0.2%程度となる。
連鎖反応
核燃料であるウラン235やプルトニウム239が中性子を吸収して核分裂すると、複数個の新しい中性子が飛び出す。この中性子がほかの核燃料に吸収されると次の核分裂を起こす。このようにして、連続的に核分裂が続いていくこと。
炉心スプレイ
BWRにおける原子炉の事故時の安全防護装置の1つ。原子炉冷却材が流出して原子炉内の圧力が減少したときに、炉心上部から冷却に必要な水をスプレイ状にして均一に散布する装置。
WとWhの違い
W(ワット)は、電力の大きさを表す単位。一方Wh(ワットアワー)は、電力がどれだけの仕事をしたか、その仕事量 (エネルギー量)を表す単位。1Wの電 気器具を1時間利用すると1Whの電力消費量(仕事量)となる。1,000W=1kW。1,000Wh=1kWh (k:キロは1,000倍を表す補助単 位)。